皆さん、「独立行政法人」は3つの類型に分けられることはご存じでしょうか?
その類型によっては、その法人の目的や、職員の身分が異なったりと、「独立行政法人」と一言で言っても多種多様です。
今回は、「独立行政法人」の種類について分かりやすく解説します。
※前提として、すべて独立行政法人ではあります。そこからさらに3つに分けられるという理解です。
先に結論
結論を先にお伝えすると、以下に分類されます。
独立行政法人の3つの類型
①行政執行法人(例:国立印刷局、造幣局など) 計7法人
特徴:国家にとって超重要な業務を実施する法人。
職員は国家公務員。
②国立研究開発法人(例:JAXA、理研など) 計27法人
特徴:国家の科学技術発展を目指す法人。
職員は民間人。
③中期目標管理法人(例:JICA、JETROなど) 計53法人
特徴:公共の利益増進を目指す法人。
職員は民間人。
以降は、それらの詳細について解説しているので、よければご覧ください。
(前提)そもそも、「独立行政法人」とは?
まず簡単に、独立行政法人について説明します。分かる方は飛ばしてかまいません。
独立行政法人とは、独立行政法人通則法に基づいて、国民生活や社会・経済安定などの公共上の見地から確実に実施されることが必要な事務・事業のうち、国が自ら主体となって直接実施する必要はないが民間に委託することは不適切であるものを効率的かつ効果的に実施させることを目的として設立される法人。
独立行政法人とは、誰かがやらなきゃ困ることを、代表して実施する機関のことです。
たとえば、
・国民生活センター
・国立がん研究センター
・大学入試センター
など、ご覧の通り誰かがやらないと困ることを実施しています。
独立行政法人は、全部で87法人あります。 ※R5.2月時点
独立行政法人の三つの類型
本題ですが、独立行政法人は、以下の3つの類型に分類されます。
独立行政法人の3つの類型
①行政執行法人(例:国立印刷局、造幣局など)計7法人
特徴:国家にとって超重要な業務を実施する法人。
職員は国家公務員。
②国立研究開発法人(例:JAXA、理研など)計27法人
特徴:国家の科学技術発展を目指す法人。
職員は民間人。
③中期目標管理法人(例:JICA、JETROなど)計53法人
特徴:公共の利益増進を目指す法人。
職員は民間人。
以下に、それぞれを簡潔に解説します。
① 行政執行法人 7法人
行政執行法人は、公共上の事務等のうち、その特性に照らし、国の行政事務と密接に関連して行われる国の指示その他の国の相当な関与のもとに確実に執行することが求められるものを国が事業年度ごとに定める業務運営に関する目標を達成するための計画に基づき行うことにより、その公共上の事務等を正確かつ確実に執行することを目的とする法人。
行政執行法人は、お金を刷ったり公文書を適切に保管したりと、国家にとって超重要な業務を遂行するための法人です。
例(国立印刷局、造幣局など)から想像できるように、国と密接に連携して業務を遂行する必要のある法人たちです。
その性質から、行政執行法人の職員の身分は「国家公務員」になります。
(※行政執行法人以外の独法職員は、国家公務員ではありません)
ですから、もちろん副業は禁止だったりと、まったくそのまま国家公務員です。
お金を刷ったりする人たちが民間人だと困りますものね。
② 国立研究開発法人 27法人
国立研究開発法人は、一定の自主性および自律性を発揮しつつ、中長期的(5~7年)な視点にたって執行することが求められる科学技術に関する試験、研究または開発に係るものを主要な業務として国が中長期的な期間について定める業務運営に関する目標を達成するための計画に基づき行うことにより、日本における科学技術の水準の向上を通じた国民経済の健全な発展その他の公益に資するため研究開発の最大限の成果を確保することを目的とする法人。
国立研究開発法人は、国家の科学技術の更なる発展を目的とした法人です。
その例(JAXA、理研など)から分かるように、著名な独立行政法人は、国立研究開発法人に多いと思います。イメージも一番湧きやすいではないでしょうか。
27の国立研究開発法人は、宇宙を研究したり、深海を研究したり、原子力を研究したりと、多岐にわたります。記事執筆時には、JAXAのH3ロケット打ち上げのニュースが記憶に新しいです。
その業務内容から成果が世間の目につきやすく、また華々しいものや憧れの的になることも少なくありません。知名度や注目度の高い機関が多いことから、国立研究開発法人は良くも悪くも「注目」されている法人が揃っています。(ちなみに筆者も国立研究開発法人に在籍中です)
注目されていると言いながらも、日本の科学研究費は長年横ばいが続いており、
国立研究開発法人で働いていても「今年、この程度の予算しか付かないの…?日本の科学技術、マジで大丈夫か?」と毎年感じます(笑) 税金なのであまり強くは言えませんが。
また、国立研究開発法人の特徴として、当たり前ですが理系院卒の職員が多いです。
例えば、国立研究開発法人科学技術振興機構だと、以下のように公表されています。
※理系卒かどうかは書かれていませんが、修士以上はまず理系と見てよいでしょう。
(引用元)国立研究開発法人科学技術振興機構(法人番号4030005012570)の役職員の報酬・給与等について
―最先端の研究開発の支援、マネジメントなどを行う当機構の業務を円滑に遂行するためには、広範な分野にわたる最先端の研究開発動向の把握能力や研究者・研究開発企業間のコーディネート能力など幅広い知識・能力を有する専門能力の高い人材が必要であり、大学卒以上(機構:96.1%、国:60.4%、うち修士卒・博士卒(機構:56.1%、国:7.6%))の人材を積極的に採用している。
https://www.mext.go.jp/content/20220628-mxt_ope01-000023626-10.pdfより抜粋
常勤職員440人(R5.2時点)いるので、422人が大卒(うち237人が修士卒以上)という高学歴機関のよう。
学歴フィルターも他類型に比べてキツく、入りづらいと言えます。
③ 中期目標管理法人 53法人
中期目標管理法人は、一定の自主性および自律性を発揮しつつ、中期的(3~5年)な視点にたって執行することが求められるものを、国が中期的な期間について定める業務運営に関する目標を達成するための計画に基づき行うことにより、国民の需要に的確に対応した多様で良質なサービスの提供を通じた公共の利益の増進を推進することを目的とする法人。
中期目標管理法人は、国民需要に対応した良質なサービスの提供を通じて公共の利益増進を推進することを目的とする法人です。
分かりづらい説明ですね。まずは中期目標管理法人の例を見てみましょう。
中期目標管理法人の例
・UR都市機構
一番人口に膾炙しているのは、UR都市機構でしょう。
おそらく大半の方が、
「CMも打ってるし、なんかデカめの不動産業者?」と思っていらっしゃったかもしれませんね。
実は独立行政法人都市再生機構法第3条という法律に基づいて運営されているゴリゴリの独立行政法人なんです。
読まなくてよいですが、以下が独立行政法人都市再生機構法第3条です。興味のある方は。
独立行政法人都市再生機構は、機能的な都市活動及び豊かな都市生活を営む基盤の整備が社会経済情勢の変化に対応して十分に行われていない大都市及び地域社会の中心となる都市において、市街地の整備改善及び賃貸住宅の供給の支援に関する業務を行うことにより、社会経済情勢の変化に対応した都市機能の高度化及び居住環境の向上を通じてこれらの都市の再生を図るとともに、都市基盤整備公団から承継した賃貸住宅等の管理等に関する業務を行うことにより、良好な居住環境を備えた賃貸住宅の安定的な確保を図り、もって都市の健全な発展と国民生活の安定向上に寄与することを目的とする。
https://www.ur-net.go.jp/aboutus/index.html
他にも
・国際協力機構(JICA)
他にも、国際協力機構(JICA)なんかも聞いたことがあると思います。
正直、例を見ても今一つよく分からないですね。
「…つまり何をもってして中期目標管理法人?」といった印象だと思います。
ここは乱暴な言い方ですが受け入れてほしいのですが、
「行政執行法人にも国立研究開発法人にも分類されないもの全て」とご理解いただくのが最も適当だと思います。
つまり、3つの類型のうち、むしろ行政執行法人と国立研究開発法人が特殊なだけで、
普通は中期目標管理法人だという理解でおおよそ問題ありません。
数も一番多い
① 行政執行法人 計 7法人
② 国立研究開発法人 計27法人
③ 中期目標管理法人 計53法人
まとめ
皆さん、独立行政法人の3つの類型と、その概要についてはご理解いただけたでしょうか?
以下におさらいしましょう。
独立行政法人の3つの類型
① 行政執行法人(例:国立印刷局、造幣局など)計7法人
特徴:国家にとって超重要な業務を実施する法人。
職員は国家公務員。
② 国立研究開発法人(例:JAXA、理研など)計27法人
特徴:国家の科学技術発展を目指す法人。
職員は民間人。
③ 中期目標管理法人(例:JICA、JETROなど)計53法人
特徴:公共の利益増進を目指す法人。
職員は民間人。
独立行政法人への転職を目指す方は、知っておいて損はないと思います。
自分が目指す独立行政法人が、どこに属しているかは理解しておいた方が良いでしょう。
また、すべての独立行政法人には必ず目的が定められているので、そちらも最低限チェックしておくとよいと思います。
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